行政事件訴訟は、裁判によって違法な行政作用を是正することにより、国民の権利利益を救済し、又は法秩序を維持するための仕組みです。行政事件訴訟法は、抗告訴訟、当事者訴訟、民衆訴訟、機関訴訟の４つの訴訟類型を定めています。

抗告訴訟とは、行政庁の公権力の行使に関する不服の訴訟ですが、その中でも取消訴訟、とりわけ「処分取消しの訴え」が最も頻繁に利用されており、業務停止や許認可取消し等の不利益な行政処分を争う場合がその典型です（利益処分に対して第三者が争える場合もあります。)。取消訴訟には出訴期間の制約があります。紛争の状況によっては、行政処分の無効や不存在の確認を求める訴えが可能な場合もあります。行政庁が法令に基づく申請に対して応答しない場合には、不作為の違法確認や義務付けの訴えを検討することができます。

行政指導等、抗告訴訟の対象となりにくい行政の行為を契機に国民と行政主体との間に紛争が生じた場合には、当事者訴訟の一つである「公法上の法律関係に関する確認の訴え」により救済を受けられる余地があります。

また、今日、個人の権利救済とは別に、行政活動の透明性や公正性について有権者の関心が高まっているところですが、民衆訴訟の一つとして、地方公共団体の職員等による違法な財務会計上の行為を是正するための住民訴訟があり、多用されています（住民監査請求を前置する必要があります。）。

一方、行政庁の違法又は不当な公権力の行使に対する簡易迅速な救済手続として、行政不服審査制度があります。審査手続では、違法性の有無だけでなく政策的な当否についても広く取り扱うことができます。上述した業務停止や許認可取消しをはじめ、情報公開制度に基づく行政文書の不開示決定、労災保険(遺族補償給付、障害補償給付等)の不支給決定、建築確認処分、国税や地方税の課税・滞納処分など、様々な分野における行政処分に対して不服申立てを検討することができます。

国家賠償制度は、違法な行政活動によって生じた損害を国又は公共団体が賠償する制度です。公権力の行使に当たる公務員の不法行為、あるいは公の営造物（道路、河川等の公物）の設置管理上の瑕疵によって損害が生じた場合などが対象となります。行政処分が違法であることを理由に国家賠償請求訴訟を提起する場合、あらかじめ行政処分につき取消し又は無効確認の判決を得ておく必要はありません。

行政にかかわる紛争・トラブルは、一般の民事紛争と比べると、どのような手段を用いてどのように解決を目指していくのかが分かりにくく、専門知識を踏まえた慎重な検討や様々な工夫を要する場合が少なくありません。当事務所では、所長弁護士が旧司法試験の選択科目として行政法を選択していたこともあり、行政にかかわる法律問題に関するご相談にも積極的に対応しております。